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弁護士になって16年目となりました。
最初のころから離婚関連事件のご相談、ご依頼を受けることが多かったのですが、
最近、「弁護士になって数年のころと、今とでは、離婚事件をめぐる色々なことが変わってきたなあ。」
と思うことがあります。

そのうちの一つが、ご相談者のインターネットの活用状況です。
これは離婚事件に限らないことですが、いつでもどこでもスマホから自分の知りたい情報を見られるようになったことは、
法律トラブルの対処の仕方において相当の影響を及ぼしていると思います。

ただ、これも離婚事件に限りませんが、
法律トラブルは、本当にケースバイケースで、文字通り、当事者さんの数だけその中身は違うものです。
そして、似たようなケースでも、1つ2つの事情のちがいで、解決方針や解決方法、事件の見込みが全く変わる、ということは十分ありえます。

そうしたことからすれば、ネットでの情報というものは、
あくまでもその当事者さんに限った内容であり、他の人にそのまま当てはまるということはまずない、
と考えた方が間違いがない
と思われます。

離婚事件でいうと、たとえば監護権や親権の争いにおいて、
・子供が生まれてから今まで、両親でどのように子育てを分担してきたか、について、かなり細かい具体的事情が判断されることがありますし、
・別居親と子供が別居した具体的事情が重視される度合いもケースによって違いますし、
・子どもの心情がどれくらい判断に影響するかについても判断が微妙なケースがありますし、
と、様々な判断要素、判断方法が考えられますので、表面的、画一的に判断してしまうことは望ましくありません

また、ネットの情報は大雑把なものが少なくないので、あくまでもそのケースだけに限った内容が、定説であるかのように流れていることもあります。
この点、最近気になるのは、たとえば「離婚調停は3回(5回)で終わる」といった、裁判所の手続きに関する不正確な情報を耳にすることが増えたことです。
離婚調停手続でいえば、調停の回数に決まりはなく、調停成立の可能性がある間はかなり長く続くときもありますし、逆に成立の可能性がないとはっきりした場合は、1回目や2回目で終わるものです。
(そもそも調停手続きというのものが、わかりやすそうでわかりにくいものなのなのですが、意外に?手続きの性質をきちんとわかりやすく説明しているネットの情報は少ないのでしょうか、広く一般的に知られている印象がありません。)

以上のことからすると、やはり、離婚に関するお悩み事の具体的な解決を目指すにあたっては、
弁護士に直接ご相談頂くことが重要だと思われます。

もちろん、ネットで情報を得ることは便利で、使い方によってはとても有効ですので、
様々な情報ソースを積極的に利用していただければと思います。









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2021.01.04 Mon l 離婚事件 l top
最近、不貞行為が関連する離婚のご相談が増えています。

「不貞行為」は、法律用語で、民法上、裁判で離婚が認められる事由の一つとされています。
意味は、
「配偶者がいる者が、その者の意思で、配偶者以外の異性と性的な関係を持つこと」
とされています。

ここでまず大切なことは、
離婚前の男女関係が、全て不貞行為となるわけではない、ということです。

法律上不貞行為にあたれば、それを理由に裁判で離婚が認められることから、離婚事由とならない男女関係であれば、不貞行為にはなりません。
具体的には、
婚姻関係の破綻後、つまり、夫婦関係がもはや修復不可能な程度に壊れてしまった後の男女関係、
は不貞行為とはされません。
この点が裁判で争われることが少なくないですが、ただ、婚姻関係の破綻は様々な事実を考慮して判断され簡単に認められるものではないので、不貞行為にあたるかどうかの判断は簡単ではないことが普通です。

それでは、不貞行為を自分や相手が行った場合、
離婚にどう関係してくるのかを、簡単にご説明します。

〜自分が不貞行為を行った場合〜
この場合、大きな問題となるのは、
自分が離婚したくても、配偶者が離婚に応じない場合、裁判を行っても離婚が原則として認められない、ということです。
不貞行為は違法行為であり、そうした行為を行った者の離婚請求は原則として認められるべきではない、と考えられているからです。
もっとも、自立していない子供がいなくて、別居期間が長期になっており、離婚を認めても相手配偶者に深刻な不利益が生じないとおもわれる場合は、例外的に離婚が認められる場合はあります。

また、これはよく知られていることですが、
慰謝料の支払義務が生じます。
金額は、様々な要素を考慮して決められるので、かなり幅のあるものと言わざるを得ませんが、不貞が原因で離婚に至った場合は、訴訟の判決では数百万の金額が認められますから、支払いの負担は大きいです。

〜相手が不貞行為を行った場合〜
離婚事由になるので、相手が離婚を拒否しても、最終的には裁判で離婚が認められます。
また、上記のとおり、相手には慰謝料支払義務が生じるので、慰謝料を請求できます。

〜子どもをめぐる紛争との関係〜
一方、直接の影響が基本的にないことは、
親権の判断への影響です。
親権は、子どもを監護養育する適格性の問題なので、不貞行為を行っていても、子育てに特に支障が生じていなければ、そのことだけで親権者として不適格ということにはなりません。

また、相手が不貞行為を行ったからといって、当然面会交流する資格がない、ということにはなりません。


以上のように、
不貞行為は、離婚において、色々な意味を持ちます。
単純に判断出来るものではありませんので、少なくとも一度は弁護士へのご相談をおすすめいたします。


2017.05.11 Thu l 離婚事件 l top
現在、離婚に関する紛争として、子どもの監護権や親権をめぐる争いが増えています。

そうした現状を受けてか、ネットでも色々な見解が流れているように思いますが、
そうしたものを見ていて「…?」と時々思うのが、

“母親というだけで、監護権や親権は簡単に取れる”
という誤解です。

たしかに、別居において監護権を、離婚において親権を、母親が取得することが、結果的に数でいうと非常に多いと思います。

しかしそれは、「母親だから」という単純な理由ではありません。

家庭裁判所で監護権や親権を決めるときの基本的な考え方は、
・子どもが生まれてから別居するまで
・別居以降
・将来離婚した場合
のそれぞれの段階において、子どもの監護養育が、具体的にどのようになされていたか、またなされる予定かを総合的に考慮するというのが一般的です。
つまり、実際の子育てを、誰がどのように行っていたか、また誰がどのように行えるのか、ということで判断されます。

通常の夫婦の場合、子どもが生まれてから、主に育児を担っているのは妻=母親です。
この「主に育児を担っている」かどうかは、授乳、ミルク作り、ミルクをあげる、離乳食を作る、食べさせる、おむつを替える、お風呂に入れる、寝かしつけ、あやし、しつけ、着替え、保育園や学校への送り迎え、食事の準備、翌日の準備、宿題の手伝い、連絡帳などの管理、等々、といった、実際の育児や子育てを具体的にどれだけ行っていたかという問題です。

そのため、こうした実際の育児、子育てを、夫婦で平等に行っていたり、夫=父親のほうが主に行っていた場合は、
子どもが生まれてから別居するまでの主な監護者は両親、あるいは父親ということになりますから、仮に妻=母親が子どもを連れて別居していたとしても、父親が子どもの監護権や親権を取れる場合はあるということになります(ただし、もちろん、他の要素も考慮されますので、ケースごとの判断にはなります。)。

なお、別居期間がかなり長期になっており、別居後の子どもの生活が心身ともに安定している場合は、別居後の監護状況が相当に重視される可能性があると思いますが、そうではない場合は、

別居に際して子どもを連れていったほうが
監護権や親権を取れる、つまり、「連れていった者勝ち」、
ということにはなりません。


別居までの生活において主に子どもを監護していた親が子どもを連れていった場合、子どもの福祉の観点から考えて、大きな問題はないと考えられるのが通常であるため、結果的に、子どもを連れていったことが問題とされない、ということです。

主に子どもを監護していた親と引き離すような形で、子どもと同居しても、引き離された親から子の引き渡しの調停や審判を起こされると、結局子どもを引き渡さなければならないことは多く、結果として、子どもに大きな負担をかけかねません。

両親にとって、子どもはかけがえのない存在であり、一日も離れていたくない気持ちをそれぞれが持つことは当然です。
しかし、親の別居、離婚自体が、子どもに負担をかけてしまう中、それ以上の重い負担を子どもにかけないためにも、「子どもにとって、どうするのがより良いのか」という視点で考えることを常に心がけ、行動することが望ましいといえます。この作業は、夫婦間の葛藤が強いほど大変ではありますが、両親の別れに際して、せめて子どもために、双方の努力が求められるものといえます。


2017.02.26 Sun l 離婚事件 l top
このブログでも何度かご説明しているとおり、
離婚に際して、夫婦で築いてきた財産の清算を行うこと(財産分与)は大切であり、
そのためにはまず夫婦共有財産にあたる互いの名義の財産を調査、確定することが重要です。

今回は、そのうち、退職金債権についてご説明したいと思います。

(なお、ここで、「退職金」ではなく「退職金債権」と言っているのは、離婚時にまだ退職していないため、職場に対して退職金を貰う権利=退職金債権を夫婦のどちらか、あるいは双方が持っている場合についてのお話だからです。
すでに退職して退職金が支払われている場合は、現金あるいは預貯金として残っているものが夫婦共有財産にあたりうるということになります。)

① まず、そもそもなぜ退職金債権が夫婦共有財産にあたる場合があるかですが、
退職金は、賃金の後払いの性格が強いとされていますから、夫婦のなんらかの協力関係によって夫や妻が働いたことで得る予定の退職金債権は、共有財産にあたりうることとなります。

しかし、一方で、
今勤めている会社に定年まで勤めるかどうかは、将来のことなのでわからないともいえます。
そのため、今の裁判実務ではおおよそ、定年まで残り10年前後が、退職金債権が夫婦共有財産に含まれるかどうかの分かれ目とされる傾向があります(はっきりした線引きがあるというわけではありません。)。
 
そして、
定年まで残り1~2年ほどであれば、定年時に支払われる予定の金額を基礎として夫婦共有財産を考える傾向があり、
定年まで残り3、4年以上ある場合は、別居あるいは離婚の時点で支払われる予定の金額を基礎として夫婦共有財産を考える傾向があるのが、裁判実務と考えられます(これもはっきりした線引きがあるというわけではありません。)。

②つぎに、そもそも夫婦の協力関係によって形成された財産でないと夫婦共有財産には含まれませんので、
結婚前からその会社に勤務していた場合であれば、結婚後の勤務にあたる部分のみの退職金債権が夫婦共有財産となります。
ですので、具体的な計算式としては、

退職金債権(退職した際に受け取る予定の金額)×結婚(同居)期間/勤続年数×1/2
が、原則として一方配偶者の持ち分ということなります。

このように、
退職金債権が夫婦共有財産に含まれ財産分与の対象となるかならないか、
財産分与の対象になるとして、どの範囲の退職金債権が対象になるか、金額はどうか、

といった考えるべきポイントが色々あるものではありますが、離婚に際し、検討してみることが大事な問題と思われます。
2016.05.25 Wed l 離婚事件 l top
清明祭の時期も、そろそろ終わろうとしている今日この頃ですが、
やっとお天気が続くのかなと思ったら、一気に暑くなってきましたね
体調管理に気をつけたいと思います

さて、今回は、離婚事件においてよく問題となる面会交流について、あらためてお話ししたいと思います。

面会交流とは、「離婚後又は別居中に子どもを養育・監護していない方の親が子どもと面会等を行うこと」(裁判所のサイトより)です。

林が弁護士になったころは、裁判所では、「面接交渉」と言われていましたが、6、7年くらい前から、「面会交流」に変わっていきました。特に内容が変わったというわけではないのですが、呼び方は大切だと思います。より、子どもと別居親とがコミュニケーションを取るという意味合いがはっきりしたのではないでしょうか。実際、この頃から、家庭裁判所の実務において、面会交流が重要視されるようになっていったように感じます。

そして、2013年にハーグ条約(「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」)を締結し、実施法が成立したことで、よりいっそう、面会交流が重視されるようになったように思います。

最近では、各親が、もし自分が親権者となった場合にどれくらい別居している親と面会交流をさせる予定でいるかということが、家庭裁判所が親権を決める際のポイントの一つになっているといえます。
もちろん、別居親が子どもに対して肉体的ないし精神的虐待を行っていたり、精神的に非常に不安定などの理由で面会自体が非常に困難といった具体的事情がある場合は別ですが、そういった事情のない場合は、子どもに負担がかからず、生活リズムが乱れない範囲で、色々な形での面会交流を行うことがのぞましいとされていると思われます。

実際に会うことがなかなか難しいケースであれば、写真を送る、電話でお話する、手紙のやり取りをする、また最近ではスカイプを利用するなど、方法を考えるのがいいかもしれません。

では実際どれくらいの頻度で会うのがのぞましいかは、本当にケースバイケースですので、お父さんとお母さんの丁寧な話し合いで決めるのが一番だと思います。
その際、会った場合に同居親の悪口を言わない(もちろん、同居親が別居親の悪口を言うことはだめです。)、どちらの親を選ぶのかといった質問をしない、過度に物を買い与えない、などの面会交流の基本的なルールを確認するとともに、お子さんが楽しく面会できるよう、双方で、お子さんの心情や健康面からの配慮を心がけることが大切です。

とはいえ、特に(元)夫婦間での紛争度が高い場合は、両親で話し合って決めていくのは難しいもの。その場合は、家庭裁判所に面会交流の調停を申し立て、あらためて十分に話し合うことをおすすめします。家裁では、場合によっては、調査官という専門職が調査に入り、お子さんにとってどのような面会交流がのぞましいかを判断するにあたっての色々な調査を行います(各親との面談、子どもとの面談、自宅訪問、場合によっては園や学校の先生との面談など)。

面会交流がスムーズに決まっていくことで、離婚そのものや、婚姻費用・養育費の支払いについても解決していく場合があることからも、お悩みの際は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。


2016.04.18 Mon l 離婚事件 l top