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現在、離婚に関する紛争として、子どもの監護権や親権をめぐる争いが増えています。

そうした現状を受けてか、ネットでも色々な見解が流れているように思いますが、
そうしたものを見ていて「…?」と時々思うのが、

“母親というだけで、監護権や親権は簡単に取れる”
という誤解です。

たしかに、別居において監護権を、離婚において親権を、母親が取得することが、結果的に数でいうと非常に多いと思います。

しかしそれは、「母親だから」という単純な理由ではありません。

家庭裁判所で監護権や親権を決めるときの基本的な考え方は、
・子どもが生まれてから別居するまで
・別居以降
・将来離婚した場合
のそれぞれの段階において、子どもの監護養育が、具体的にどのようになされていたか、またなされる予定かを総合的に考慮するというのが一般的です。
つまり、実際の子育てを、誰がどのように行っていたか、また誰がどのように行えるのか、ということで判断されます。

通常の夫婦の場合、子どもが生まれてから、主に育児を担っているのは妻=母親です。
この「主に育児を担っている」かどうかは、授乳、ミルク作り、ミルクをあげる、離乳食を作る、食べさせる、おむつを替える、お風呂に入れる、寝かしつけ、あやし、しつけ、着替え、保育園や学校への送り迎え、食事の準備、翌日の準備、宿題の手伝い、連絡帳などの管理、等々、といった、実際の育児や子育てを具体的にどれだけ行っていたかという問題です。

そのため、こうした実際の育児、子育てを、夫婦で平等に行っていたり、夫=父親のほうが主に行っていた場合は、
子どもが生まれてから別居するまでの主な監護者は両親、あるいは父親ということになりますから、仮に妻=母親が子どもを連れて別居していたとしても、父親が子どもの監護権や親権を取れる場合はあるということになります(ただし、もちろん、他の要素も考慮されますので、ケースごとの判断にはなります。)。

なお、別居期間がかなり長期になっており、別居後の子どもの生活が心身ともに安定している場合は、別居後の監護状況が相当に重視される可能性があると思いますが、そうではない場合は、

別居に際して子どもを連れていったほうが
監護権や親権を取れる、つまり、「連れていった者勝ち」、
ということにはなりません。


別居までの生活において主に子どもを監護していた親が子どもを連れていった場合、子どもの福祉の観点から考えて、大きな問題はないと考えられるのが通常であるため、結果的に、子どもを連れていったことが問題とされない、ということです。

主に子どもを監護していた親と引き離すような形で、子どもと同居しても、引き離された親から子の引き渡しの調停や審判を起こされると、結局子どもを引き渡さなければならないことは多く、結果として、子どもに大きな負担をかけかねません。

両親にとって、子どもはかけがえのない存在であり、一日も離れていたくない気持ちをそれぞれが持つことは当然です。
しかし、親の別居、離婚自体が、子どもに負担をかけてしまう中、それ以上の重い負担を子どもにかけないためにも、「子どもにとって、どうするのがより良いのか」という視点で考えることを常に心がけ、行動することが望ましいといえます。この作業は、夫婦間の葛藤が強いほど大変ではありますが、両親の別れに際して、せめて子どもために、双方の努力が求められるものといえます。


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2017.02.26 Sun l 離婚事件 l top