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このブログでも何度かご説明しているとおり、
離婚に際して、夫婦で築いてきた財産の清算を行うこと(財産分与)は大切であり、
そのためにはまず夫婦共有財産にあたる互いの名義の財産を調査、確定することが重要です。

今回は、そのうち、退職金債権についてご説明したいと思います。

(なお、ここで、「退職金」ではなく「退職金債権」と言っているのは、離婚時にまだ退職していないため、職場に対して退職金を貰う権利=退職金債権を夫婦のどちらか、あるいは双方が持っている場合についてのお話だからです。
すでに退職して退職金が支払われている場合は、現金あるいは預貯金として残っているものが夫婦共有財産にあたりうるということになります。)

① まず、そもそもなぜ退職金債権が夫婦共有財産にあたる場合があるかですが、
退職金は、賃金の後払いの性格が強いとされていますから、夫婦のなんらかの協力関係によって夫や妻が働いたことで得る予定の退職金債権は、共有財産にあたりうることとなります。

しかし、一方で、
今勤めている会社に定年まで勤めるかどうかは、将来のことなのでわからないともいえます。
そのため、今の裁判実務ではおおよそ、定年まで残り10年前後が、退職金債権が夫婦共有財産に含まれるかどうかの分かれ目とされる傾向があります(はっきりした線引きがあるというわけではありません。)。
 
そして、
定年まで残り1~2年ほどであれば、定年時に支払われる予定の金額を基礎として夫婦共有財産を考える傾向があり、
定年まで残り3、4年以上ある場合は、別居あるいは離婚の時点で支払われる予定の金額を基礎として夫婦共有財産を考える傾向があるのが、裁判実務と考えられます(これもはっきりした線引きがあるというわけではありません。)。

②つぎに、そもそも夫婦の協力関係によって形成された財産でないと夫婦共有財産には含まれませんので、
結婚前からその会社に勤務していた場合であれば、結婚後の勤務にあたる部分のみの退職金債権が夫婦共有財産となります。
ですので、具体的な計算式としては、

退職金債権(退職した際に受け取る予定の金額)×結婚(同居)期間/勤続年数×1/2
が、原則として一方配偶者の持ち分ということなります。

このように、
退職金債権が夫婦共有財産に含まれ財産分与の対象となるかならないか、
財産分与の対象になるとして、どの範囲の退職金債権が対象になるか、金額はどうか、

といった考えるべきポイントが色々あるものではありますが、離婚に際し、検討してみることが大事な問題と思われます。
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2016.05.25 Wed l 離婚事件 l top